経理担当者が辞めてしまった、顧問税理士が病気になった、対応してくれなくなったなど様々な理由で、無申告を放置してしまっているケースが少なからずあります。
10月から始まるインボイス制度、取引先からインボイスの登録するように迫られているけど、そもそも申告をしていない場合、どのようにすれば、良いのでしょうか?
インボイス登録の検討
まずは、期限が決まっているインボイスの登録について、検討します。
取引先からのインボイスの登録要請が会社の取引の中でどれくらいの重要度かどうかを検討するなど、検討する必要があります。
弊所ブログ「今からでも間に合う「インボイス制度」の対応方法」に検討すべき事項を記載していますので、参照してください。
なお、インボイスの登録をする必要がある場合には、9月中に登録を済ませてください。そうしないと、10月からの適用ができなくなってしまいます。そうすると、取引先に迷惑をかけてしまうことになります。
ブログを見てもわからない場合には、「お問い合わせ」より連絡してください。初回無料で相談を承ります。
次に、無申告の対応です。
無申告の場合のやるべき手順
無申告の場合、必要な書類がなくなってしまったりしているケースが多くあります。
無申告期間を確認する
闇雲に書類をかき集めても、結局要らなかったということもあり、効率的ではありません。
申告した書類が残っている場合
まず、申告した書類が残っているのであれば、その申告書や総勘定元帳を準備してください。
申告書のない期間から、無申告であることを確認できます。
なお、残っている申告書や総勘定元帳はできれば、3期ほど揃えられると、その後の処理に利用できます。たとえば、会社特有の会計処理や税務署への届出などはある程度確認できます。
ただし、青色申告であった法人が2期以上無申告が続くと、2期目は青色申告の承認の取消の処分がなされます。この処分がなされた後1年間は青色申告の承認申請書が提出できないため、確認する必要があります。
また、消費税の基準期間の課税売上高5,000万円以上の場合、簡易課税の選択届出を提出されていても、本則課税で申告しなければなりません。過去の消費税の申告で消費税の基準期間の課税売上高5,000万円以上の場合には、簡易課税の選択届出書が出されているかいなかわかりません。基準期間の課税売上高が5,000万円を下回った場合の消費税計算方法が変わるため、確認しておく必要があります。(この点は、税理士変更した際に、税理士もチェック漏れになるケースもありますので注意が必要です)
申告した記憶がない場合
申告した記憶がない場合には、原則、事業開始からが無申告期間となります。
ただし、例外があります。後ほど説明いたしますので、そのまま読み進めてください。
申告した書類が残っていない場合
引っ越ししたりして紛失してしまうなどして、申告した書類が残っていない場合には、税務署に確認する方法もあります。
その際には、本人確認書類を持参して、税務署の窓口に確認する必要があります。
調査対象期間を前提とした期間の絞り込み
ただし、無申告調査の対象となるのは、通常3~5年です。また、書類の破棄などをしていた場合に税務調査で隠ぺいの事実が確認された際には、7年までさかのぼることがあります。
揃えるべき書類を確認する
揃えるべき書類が揃っていないと、
- 届出書・申請書
- 確定申告書、総勘定元帳など
- 通帳など
- クレジットカード明細書
- 請求書(控)、領収書(控)、納品書(控)
- 請求書、領収書、納品書
- 契約書(固定資産、リース契約、保険契約、その他継続している契約など)
- 法人成りなどをした場合、個人通帳などで対応している場合にはそれも揃えておく
「調査対象期間を前提とした期間の絞り込み」で記載したとおり、7年以上前のものは、通常税務申告に必要のないことが多いです。ただ、7の固定資産や継続している契約書等は取得したり、契約したりした時期がそれ以上前であっても必要になりますので、収集できるものは収集しておきましょう。
紛失した書類の対応
過去の書類の中には、紛失してしまったケースも少なからず出てきます。そういった場合の対処法について解説します。
1,2は、税務署に行って、確認するのが確実です。
先程も記載しましたように、その際には、本人確認書類を持参して、税務署の窓口に確認する必要があります。
3,4は、銀行やクレジットカード会社に照会依頼をします。銀行やクレジットカード会社により手数料や時間がかかることがあります。これらの書類は、現金取引ではない場合、ある程度推測でき、処理が進めることができます。合計記帳等で記帳が省略されてしまった場合にも、同様の対応が必要です。
6~8の中で、現金取引の場合は通帳等で確認できません。したがって、売上や雑収入は税務調査があった場合には指摘を受ける可能性があります。また、仕入や経費などは、実際に経費を支払っていても証明することができなければ、経費として落とすことができません。そのため、その分は代表者が使ってしまったと言う処理(役員賞与や貸付金など)をすることが、一般的です。したがって、すぐに諦めるのではなく、仕入先や外注先など継続的な取引がある場合には、取引日時や金額等を確認してもらうことも検討することをお勧めします。ただ、仕入先や外注先に負担をかけることも考慮して対応する必要がります。
揃えることができる書類が揃ったら、どうすればよいのでしょうか?
決算を作成できるか確認する。
無申告の原因は様々ですが、代表者やその他の経理担当者が、申告書を作成できれば、通常無申告状態にはならないと思われます。
申告書を作成できない場合でも、決算まではできるのか、全くできないのかによって対応が異なります。
決算までできる場合
決算までできる場合には、決算書を税務署に持参して、簡易的な申告書を作成指導を受けることが可能です。
ただし、事前に税務署に連絡し日程調整などをする必要があります。
また、減価償却等の計算等は、決算に組み込まれていない限り、積極的には対応しないなど、税額に影響するケースはあります。
決算は、マネーフォワードやフリーといったクラウド会計会社のソフトを利用すると、比較的簡単にできます。ただ、節税対策等はこの方法では、相当勉強しないと対応できません。
決算どころか全くできない場合
その場合には、税理士に申告書を作成するか検討する必要があります。社長や従業員であれば問題ないです。税理士以外の経理の分かっている人に頼むと無償でやってもらっても、決算までだと大丈夫ですが、申告までになると税理士法違反になる場合もありますので、安易に頼まないよう注意してください。
税理士への依頼を検討
代表者や従業員ができない場合には、税理士に依頼を検討する必要があります。
税理士に依頼すると、記帳代行までしてもらうと、それなりにコストはかかりますが、経理担当者一人を雇うより低価格で対応してもらえることが多いです。
国税庁の重点課題の一つに「無申告者への対応」が掲げられています。インボイス制度登録制度により、今度無申告の法人に対しての調査は従来以上に強化される可能性があります。
無申告の場合、銀行などの借り入れの際必要な確定申告書の控えや納税証明書などの提出に支障をきたすため、資金繰りにも影響することがあります。
無申告期間の処理順序
無申告期間が複数年ある場合、古い期から処理を進めていきましょう。逆に新しい期からさかのぼると矛盾が生じるケースも発生しやすくなります。
さらに、無申告期間に青色申告の承認を受けている期間があり、繰越欠損金が残っていた場合には、その繰越欠損金を相殺できないケースがありますので、注意が必要です。
最後に
無申告は放置していて、良いことはありません。顧問税理士が病気などで対応できない場合、今後どうするかを確認しておく必要があります。税理士が対応できない場合で、これからきちんと申告をしていきたいと考えているのであれば、弊所においても今後の対応をさせていただくことも可能です。「お問い合わせ」より連絡してください。初回無料で相談を承ります。
なお、この投稿は、投稿日現在の情報です。投稿者の私見が含まれており、情報の誤りがある可能性もあります。また、個々の状況により、適切妥当な判断が異なる場合もあります。したがって、本投稿に基づき、発生した損害等は一切応じられません。顧問税理士がおられる場合には、相談していただくことをお勧めいたします。
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