令和五年八月八日 こだま税理士事務所開業。
開業記念\(^o^)/特別ブログの第1弾として、税務調査で指摘を受けないための「税務調査対策3大ポイント~ベスト3」について、解説します。
顧問税理士から「あれもだめ。これもだめ。それもだめ。…」と言われ、「指示されることが多くて、覚えきれない」とか「じゃぁ、どうすればいいの?」とか思っていらっしゃる方は少なくないと思います。
なので、国税OBの代表税理士が、税務調査をする際にチェックしていたポイントを3つに絞ってみました。
現役の国税職員にとっては、こんなこと表に出されたら、税務調査で指摘事項がなくなってしまうのではないかと一瞬思ってしまうものです。私の知り合いの税務職員に会ったら、文句を言われるかもしれません(笑)。実際には、公務員倫理法の規制であまり会えない(涙)ので、直接文句を言われる可能性はほとんどありませんが、陰口はあるかもしれません(笑)。また、実績の上がらない国税職員はこのポイントを抑えておけば、実績が上がること間違いなしです(笑)
では、早速、「税務調査で指摘を受けないためポイント」のベスト3から発表します。
第3位は、『「儲け」と「期間」が合っているか?』です。
所得税や法人税は所得という利益に似たものに税率をかけて算出します。会社(ここで言う「会社」は「企業」のことで、法人だけでなく個人も含みます)は半永久的に経営を続けようとします。利益が確定しないと、国はいつまでたっても税金を納めてもらえません。仕方がないから、期間を区切って税金を納めてもらうようにしたのです。
「『儲け』の計算」が「決められた『期間』」に(このことを、「期間損益計算」といいます。)きちんと合っていれば、この点において、税務署から文句をいわれる筋合いはありません。しかし、そう簡単にはきちんと期間損益計算することはできません。なぜなら、…
会社はいろんな目的をもって経営活動をしています。どんな目的があろうとも半永久的に経営をし続けるには、儲ける必要があります。儲けなければ、従業員は当然のこと経営者だってその会社に居続けることは難しいです。
儲けるには、まず先に①「投資」をして、②「付加価値」を付けて、③「リターン」を得るパターンが普通です。①の「投資」とは「コストを賭ける」ことで「費用(経費や原価など)」こと、②の「リターン」を得るとは「商品やサービスを提供する」し「収益(売上や雑収入など)」を回収できること、③の「付加価値」とは「儲け」や「利益」に当たります。
時系列で計算式で示すと…
原価・経費(投資)+利益(付加価値)=売上(リターン)
純粋の成果を計算式で示すと…
利益(付加価値)=売上(リターン)-原価・経費(投資)
このパターンが決められた期間内に全てを完了することができれば、特に問題はありません。
しかし、会社は半永久的に経営し続けます。決められた期間毎に「では一旦休みます」なんてことをしていたら、「儲け」るチャンスをみすみす逃してしまうことになってしまいます。
「決められた期間」をまたぐ経営活動
なので、どうしても「決められた期間」をまたぐ経営活動が発生してしまうため、面倒臭いことになってしまいます。
面倒臭いことの具体例として、棚卸しや減価償却、債権債務の未決済などがあります。
特に債権債務の未決済は期間内に精算ができていない場合です。本来であれば、債権債務の精算が期間内にあろうがなかろうが、関係ないのです。しかし、個々の売上や経費は入出金ベースで記帳される会社がこれまで比較的多く、実際の「投資」や「リターン」と一致していない債権債務の請求書(控)や請求書など(納品書・領収書などを含みます)をチェックして調整をする必要があります。また、チェックが遅れるため、請求書などを紛失するケースが増える可能性もあります。
消費税のインボイス制度が始まると課税事業者(原則課税の場合)は適格請求書を課税仕入れ等の根拠としているため、今後請求書ベースの記帳が増えてくると思います。請求書などのチェックは入出金ベースより早くチェックするため、紛失等の可能性も減っていきます。
「投資」と「売上」が「期間的に一致」
また、「儲け」を正しく計算するには、「投資」と「リターン」が「期間的に一致」していないといけません。
例えば、80万円の投資をして、20万円の付加価値を付けて、100万円の売上があったとします。今期に投資し、次期に売上があった場合、今期の投資をそのまま経費としてしまうと、今期80万円の赤字、次期100万円の黒字となってしまいます。
なんかおかしいと思いませんか?80万円の努力は無駄ということですか?100万円の成果は何の努力もなく成果をあげたのでしょうか?努力を金額で表した費用(原価や経費)と成果(売上や雑収入)を金額で表した収益は一致させておかないと、正確な儲けなんて計算できません。この「『努力』と『成果』の一致」を会計学では「費用収益の対応の原則」と言っています。
では、費用にできない80万円は、どうすればいいのでしょうか?
これを一旦資産として費用の棚上げにしておくのです。いままで、普通なら「原価」や「経費」というところをあえて「投資」として表現してきたのは、費用の棚上げなどがあるからです。設備投資や株式投資と同じようにすぐに(今期に)リターンがあるとは限らず、一旦資産として費用の棚上げをしておく必要があるからです。
「儲け」はいつ計算すべき?
そして、「儲け」はいつ計算すべきなのでしょうか?
「儲け」はやはり実現したときじゃないと、絵に描いた餅になってしまいますよね。「儲け」は「リターン」の中に含まれていますから、「リターン」が実現したときということになっています。
では、実現したときというのは、具体的にはどういう時をいうのでしょうか?
「リターン」を集金したときと言いたいところですが、違います。だってもらえるか分からないのに集金した時の方がいいでしょう‼と思っている方は多いと思います。けれど、集金を先延ばししたりされたら、税務署も困ってしまいますよね。なので、法律上一定の条件を定めたときを実現したときを決めています。ただ、集金したときはありません。そのかわり、集金できない場合を考慮し、貸倒引当金処理を認めてくれています。
税務調査で見るポイント
こういった点を税務調査ではきちんとできているかチェックされます。なので、請求書(納品書・領収書など)は会社が貰ったものだけでなく、渡したものを保管しておく必要があります。取引の事実を確認する書類がないと取引の事実を確認するために、税務署は取引先に反面調査する可能性が高くなります。取引の書類があったとしても、その書類の正当性に疑義が疑われたり、漏れ等が疑われる場合なども反面調査される可能性があります。ただ、反面調査をされると、今後の取引に影響を及ぼす可能性があるため、普段から取引の保全に努めておくことをお勧めします。これからの電子帳簿保存法に対応にあわせて、クラウドサーバーに一本化していくように保存しておくと、あれこれ探さず済むかもしれませんし、顧問税理士とのやり取りがスムーズに済んだりや税務調査が早く終わってくれる可能性もあります。
賢い税務調査の受け方
税務調査があった際には、影響のある取引先の反面調査を避けるために、調査に協力するとともに、売上先のなど影響のある取引先の取引の事実確認は可能な限り、会社で用意したい旨伝えておくと良いと思います。税務署は、基本的に「銀行調査」や「反面調査」をやっていないと「深度ある調査」をしていないと上から判断されるため、調査を受けた会社が知っているかどうかは別として、何らかの「銀行調査」や「反面調査」はあると思っておいたほうが良いと思います。しかし、先程の対応をしていれば、闇雲に反面調査をされる可能性は減り、取引先への影響を最小限に抑えることができる可能性があります。何らかの資料や情報があるなど通常でない場合には、先程の対応しても意味を成さないこともありますが…。
『期間計算が合っているか?』をなぜ第3位にしたのか?
この期間計算は、会社にとって、調査結果によっては資金繰り等にも影響する大きな問題です。しかし、有能な調査官であれば、概況聴取等や基本的な処理の流れの中で、「期間損益計算」はチェックはしますが、不正がなければ、比較的短時間で他のポイントを見ようとします。それは、通常「保険」程度しか考えていないからです。それはなぜでしょうか?
税務調査でいくつもの問題点があったとしても、納税者に全ての問題点を直させるのは、修正等はあっても、根本的な改善は不可能であると考えているからです。税務調査に行くと、0点(またはマイナス)から80点までいろんな点数の会社があります。例えば、40点の会社に80点まで一気に点数を上げろと言って尻叩きをしても短期的形式的には可能ですが、長期的実質的には無理です。学生時代でもそんなこと簡単にできないのに、会社だって同様です。もしそんなことをした場合、会社が「尻の毛まで抜かれる」と思われ、「税務署嫌い」になってしまい、その次の調査のときには20点やマイナスに下がってしまうかもしれません。そんな調査をしたら本末転倒になってしまいます。そう考えて税務調査をする職員が少なからずいます。ただ、そうでない職員も当然います。
なお、「尻の毛まで抜かれる」とか「うちなんかより、もっと悪い会社に調査に行け」といった類の発言をする傾向が多いのは多額の不正をやっている会社や調査非協力的な会社です。なので、このような類の発言があった場合は、よく分かっている有能な調査官には闘志に火をつける結果になり、いい結果にはならないので、注意してください(笑)。
税務調査では、問題があると想定される会社を優先的に調査しますが、あまり問題が少ないと思われる会社もある一定の規模の会社などは定期的に調査を行います。過去の調査で、不正がないことが続いている会社は、80点近いことが多いです。しかしながら、税務調査は3~5年、不正があれば7年前まで調査対象になります。
そんな長い期間に全く何のミスもないということがあり得るでしょうか?私なんか1日に何回も判断ミス等している人間なので、全く何のミスもないということはないと思っています。通常の調査であれば、2~3日から1週間程度(反面調査や金融機関調査を行うため、実際には結果が出るまでもっと時間がかかります。)会社での調査で全てを見ることはできません。先程の優秀な調査官は、問題がないと業務成績の評価を下げることになってしまうため、大きな問題がなかったときの最後の「保険」としてペンディングにしておきます。また、大きな問題があったときの「駆け引きの材料」として使います。その方が、調査計画件数が決められている中で、処理を順調に進めていくには、有効な方法だからです。
税務調査の本来の目的は適正公平な課税の実現にあります。公平であれば、全てを是正するべきだという考え方もありますが、すべての会社が80点に近ければ、見つけた問題を是正することはある程度は可能かもしれません。それでも、100点満点は存在しません。
なので、多額とか違和感のあるものは別として、期間損益計算は大きな問題ではないと考え、大きな問題となる不正がないかを中心に調査をするようになります。多額とか違和感のある期間損益は不正に繋がるケースが多いのでじっくり見ていることもあります。期間損益しか見れない調査官もいますが…。
期間が今期か、次期かといった観点では、2期通算してみれば、トータル的には実質的に過少申告加算税及び延滞税が課されるだけで本税は増えません。なので、有能な調査官は「保険」という見方をしてしまうというのも一因です。ただ、期間計算の問題でも期間が2期で済むものと長期にまたがるものがあった場合には長期のものを優先して調査します。
以上、税務調査での観点で『「儲け」と「期間」が合っているか?』すなわち『期間計算が合っているか?』を「税務調査で指摘を受けない3大ポイント」の第3位にしました。
一方、経営管理の観点からは、期間損益計算をしっかりしていないと、正しい経営分析ができず、影響が出てしまう可能性もあります。なので、しっかりと期間計算をしたほうが良いと思います。ただ、完璧を求めすぎても完璧はありえないので、顧問税理士と相談して緩急をつけてテキトーな処理(適切妥当な処理)をするのが、オススメです。
なお、読者にわかりやすいように解説したため、税務調査の観点から解説していますが、期間損益計算は、会計学上の理論で、その上に所得を調整する個人の所得税や法人の法人税等が乗っかっているというイメージで考えていただけるとより正確です。
長くなってしまいましたので、今回はここまで、とさせていただきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
税務調査で指摘を受けないための「税務調査対策3大ポイント」の第3位の次は… 次回(来週)もお楽しみに‼
なお、この投稿は、投稿日現在の情報です。投稿者の私見が含まれており、情報の誤りがある可能性もあります。また、個々の状況により、適切妥当な判断が異なる場合もあります。したがって、本投稿に基づき、発生した損害等は一切応じられません。顧問税理士がおられる場合には、相談していただくことをお勧めいたします。
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