さいたま市の税理士事務所の国税OBが考える税務調査対策ベスト1

query_builder 2023/08/22
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令和五年八月八日 こだま税理士事務所開業。

開業2週目記念\(^o^)/特別ブログの第3弾として、税務調査で指摘を受けない「税務対策3大ポイント~ベスト1」について、解説します。

特別ブログ第1弾「税務調査対策3大ポイント~ベスト3」

特別ブログ第2弾「税務調査対策3大ポイント~ベスト2」はお読みいただけたでしょうか?まだ読まれていない方は、ぜひお読みください。

では、早速、「税務調査で指摘を受けないポイント」のベスト1位の発表です。

第1位は、『「儲け」と「主体」が合っているか?』です。

「主体」って何?と思われた方がほとんどだと思います。

まずは、「主体」から解説していきます。

「Who(誰が)」「How(どうした)」ということです。ここで言う「主体」とは、簡単にいうと「会社(このブログでは企業のこと)」のことです。「儲け」とは、「投資」と「リターン」の経営活動の結果のことです。より厳密に言うと会計や税金の対象者である会社がした経営活動が一致しているかどうかです。

それがなぜ重要なのでしょうか?第1弾から説明しているとおり、「儲け」る必要がある会社は経営活動によって「儲け」ます。「儲け」るため、①「投資」をし、③「リターン」を得ます。その「儲け」は「投資」した会社が受ける「リターン」の中に含まれています。もし、「投資」をした会社が、別の会社などに「リターン」をもっていかれたら、どうでしょう?「そんな馬鹿なことあるか」って、思う方は少なくないと思います。国だってそんなことされたら税金が減ってしまうことになる事になりかねないので、「そんな馬鹿なこと」は許さないと考え、重点的に、税務調査をするのです。

2つの原因

しかし、現実には様々な理由によって、「そんな馬鹿なこと」が存在します。大きな原因として、2つに絞ってみました。

第1に、「会社と個人を一緒と考えてしまっている」ことが理由です。

この大きな根本原因は、誤った節税対策が流れてしまっていることと、会社経営者等の知識不足です。SNSや経営者・知人等で広がる節税対策は、まともなものも当然あります。しかしながら、まともなものでないものも多く拡散し、そちらの方が残念ながら、拡散が大きいように感じます。なお、個人の方は会社=事業、個人=事業以外と置き換えて理解していただけるとわかりやすいと思います。

また、取引先の経営者に「こんな節税対策をしたが、税務調査で見つからなかったから問題がない」といった話をされると、大概の方は鵜呑みにしてしまいます。私だって、国税の職場にいなかったら、そう思っていたと思います。でも、考えてみてください。通常の中小企業の会社での税務調査は長くて1週間程度です。その間で、過去3~5年の証拠や会計処理を全てを見ることができると思いますか?会社や税理士が、決算や申告を作るのだって、その何十倍の時間をかけて、作っているのに、税務職員にそんなことできるわけありません。税務職員はスーパーマンでもウルトラマンでもありません。ただの人間です(笑)。

さらに、前にも説明したように、分かっていても優先度や重要度を考慮し、棚上げしているケースもあります。そんな棚上げしているものには、後任者引継事項として、税務署の閻魔帳に記載されていることもあります。

もし、税務調査で聞きたいことがあったら、質問して下さい。割とフランクに答えてくれます。税務職員も全て知っている人はいないので、自分で確認したり、人に聞いたりして回答してくれるはずです。税務調査が終わっても相談があるといって、質問が続いたことが何度もありました。税務調査が終わったら、税金の質問は、国税庁HPのチャットボット(ふたば)タックスアンサー及び国税庁電話相談センターなどを活用するか、顧問税理士に相談してください。そうでないと、その税務職員は、仕事が進まなくなってしまいます(笑)。それから、質問の回答に対しては、すべて同じ回答にはならないこと注意してください。質問の際の前提条件が変わることにより、回答が全く違うこともありえます。そういった意味では、顧問税理士さんに相談したほうが良いと思います。そのうえで納得行かないのであれば、国税庁HPを使用することを検討するほうが良いと思います。

話が脇道にそれてしまったので、元に戻します。何の話でしたっけ?そう、「会社と個人が一緒」の話ですよね。

「これ会社につけといて」「会社の経費で落とすからいいよ」なんて話よく聞きませんか?

会社につけといていい場合、会社の経費で落としていい場合ってなんでもいいのって、税務職員は思ってしまいます。なんせ、税務署はケチで来署者用のお茶代でさえ、毎月職員自腹でつみたててるぐらいですから、一般の会社員に比べて、当然厳しい目で見てしまいます(笑)。問題なのは、よくある経費の中でも交際費関係は、これに該当することが多いです。繰り返しますが、経費は「投資」です。「リターン」を産む(または産むことが見込まれる)経費であれば、経費として必要です。でも、必要でもない経費や過剰な経費をつけたり、落としたりしてませんか?その経費分を「儲け」るには、どれだけの「投資」が必要ですか?ただ、取引先や社員のコミュニケーションは経営活動をしていくうえで、欠かせないものです。会社の業態等を踏まえ、予算を設定するなど検討してみてはいかがでしょうか?ちなみに、社長さんや営業担当で接待まみれの会社さんがあります。会社の状況も考慮する必要がありますが、「『俺が接待をやらなきゃ会社が潰れる』といっておられる社長さん、『あなたが先に潰れたら、もっと早くに゙会社は潰れちゃいますよ』」と何回か言っていました(笑)。

交際費の他にも、リモートワークが増え、スマホやパソコンの通信費や本体・付属品にかかる費用が増えたり、電子決済が増え、Suicaなどの電子決済に個人的なものが含まれたりしてきて、従来以上に会社が負担すべきか、個人が負担すべきか分ける必要があるものも増えてきています。税務署対策だけでなく、経営を明確化するためにも、会社と個人の区分をして、見直ししてみることをお勧めします。特に独立したての会社では、非常に難しいと思いますが、できるところから徐々に改善していきましょう‼

トリプルパンチ

税務調査でこの内容で、法人の場合、指摘を受けるといわゆる「トリプルパンチ」になってしまう可能性が高くなります。「トリプルパンチ」とは、法人税、消費税、源泉所得税の3つの税目で税金をはらわなければならないことです。

「トリプルパンチ」をもう少し詳しく説明します。代表者が使った交際費が個人的なものであったとした場合で考えてみましょう。ステップを踏んで解説します。ちょっとややこしいので分からなかったら、飛ばしてください。

【ステップ1】

会計処理上では、会社の経費ではない計上していた経費は当然認められません。一方、個人に支払った給与(経費)と認められます。経費と認められるものと認められないものの額は一致しているため、その段階では、法人税は変化していません。会計上は経費は経費なので、この段階では問題は発生しません。(個人の場合は、自分の給与=所得になってしまいますので、ここで所得税は増えてしまいます。)

なお、個人に支払った給与(経費)とはせずに、その分を回収する貸付金等とした場合には、この段階で、所得は増えるため、法人税が増えてしまいます。(この場合、ステップ2を飛ばしてください。)

【ステップ2】

法人税では、代表者や会社の役員の給与は、一般の社員の給与と違った扱いをして、厳密には報酬と言います。この報酬は定期同額等の一定の条件を満たせば、経費になるのですが、交際費のようにその場その場で金額が変わるようなものは、定期同額には当たらないので、損金不算入といって、経費に認められない処理を行います。その結果、ここで法人税は増えてしまいます。ちなみに他の処理も考えられますが、ここでは割愛いたします。(個人の場合は、このステップはありません。)

【ステップ3】

消費税では、課税事業者で原則課税の場合、通常交際費は消費税の対象となり、消費税の計算上課税仕入れとなり、消費税の計算においてその分減らすことができます。一方、給与や報酬は消費税の対象ではないため、課税仕入れにできず、その分消費税が増えてしまいます。ここまでは、会社単体のものでした。(個人の場合も、同様です。)

【ステップ4】

源泉所得税では、給与や報酬とされたものについては、所得税を追加で計算するとなっています。したがって、ここで源泉所得税が増えてきます。なお、この部分については、受け取ったとされる方(ここでは代表者)が会社にその分の源泉所得税を預ける必要があります。(個人の場合は、このステップはありません。)

ステップ1のなお書きの処理の場合、受け取るべき貸付利息分の所得が増え、法人税が増えます。さらに、その利益は貸付先の所得とされるため源泉所得税が増えます。

以上が「トリプルパンチ」の概要です。ちょっと難しかったかもしれません。理解していただいた方は、今後の経営にも活かしてもらえると思い、ちょっと深く突っ込んでみました。

国税庁HPでも公表されているとおり、法人課税担当が通常の調査を行う際に担当しているのは「消費税」「法人税」「源泉所得税」の3税と「印紙税」です。広報するためにも、実績は常にチェックし、実績向上のため様々な施策をとっています。当然個人の事績等もチェックされているはず?です。そして、各税目それぞれの指導したかどうかもチェックされるはず?です。当然、この「トリプルパンチ」は税務職員にとっては効率的かつ効果的に事務を進めるうえで、常に意識して税務調査を行っているはずです。

会社の置かれている状況によっては変わる場合もありますが、経営者等にとっては、税金の負担よりも考えてほしいのは、「経費=投資」ということを意識してほしいと個人的には考えています。

今までは「投資」のことでしたが、「リターン」も当然会社と個人を一緒と考えてしまっているケースがあります。

例えば、会社の「リターン」である売上や雑収入を代表者等の個人口座や現金で受け取り、会社に「リターン」を引き渡さなかった場合です。この場合、税務調査で見つかると、代表者等が利益を得たと認定され、報酬扱いとなり、「トリプルパンチ」が発生します。このような指摘を受けないように、個人口座や現金の受け取りは必要最低限にする、万が一受け取ったとしても「リターン」の引き渡し等の精算を忘れず行う体制を作る必要があります。現金を受け取るケースがある場合には、会社用の集金袋等と個人の財布を別にするか、財布内に個人用と会社用の保管場所を決めておく、受け取ったら速やかに会社の口座に入れるなどの対策をして、そのようなことのないようにしましょう。

会社の置かれている状況によっては変わる場合もありますが、経営者等にとっては、税金の負担よりも考えてほしいのは、「リターン=投資+儲け」ということを意識してほしいと個人的には考えています。

第2に、「会社と個人以外を一緒と考えてしまっている」ことが理由です。

「個人以外」って何?と思われた方も多いと思います。今までのパターンで解説してきたので、ちょっと無理くり作ってしまいました(笑)。ここでいう「個人以外」は「自社でない会社」のことです。税金の対象となる会社と違う会社ということです。グループ会社などの関連会社などの取引です。関連会社などは、他のグループ外の取引と比べ、ある程度グループ間でコントロールし易いため、「投資」や「リターン」を調整したり、決算のズレ等を利用したりしていることがあります。こういった場合、比較的多くの場合、不正とみなされ、重加算税を負担数ケースが多いように感じています。また、一定の要件を満たした場合に適用されるグループ合算税制等もあります。この関係については、様々な条件が絡み合って関係会社を設立している場合があるので、税務調査対策及び経営はそれぞれで考える必要があります。ただ、関連会社がある場合には、他のグループ外の取引と比べるなどして、客観的な金額設定にするなど検討したほうが良いと思います。

以上、「主体」と「損益」の違いの原因2つ(①「会社」と「個人」、②「会社」と「個人以外」)とその対応策を説明しました。

第1位の『「主体」と「損益」が合っているか?』の特に①「会社」と「個人」が合っていないと、「トリプルパンチ」になる可能性が大きいです。「トリプルパンチ」になると、調査される側にとって大きな痛手になります。一方調査する税務職員にとっては3税目の非違が一挙に指摘でき事務の効率が上がるためそこを狙ってきます。さらに、②「会社」と「個人以外」が合っていないのも含め、ウソやモレが仮装や隠ぺいと認定される可能性が高く、重加算税の賦課を意識してチェックしてきます。

税務調査対策より、不正の温床になり得る経営上の重要な問題ということをご理解ください。個人経営の会社では、実質個人と会社が一緒のため、「税務署はうるさいことをいうなぁ~」と思っている方は多いと思います。しかし、社長が変なことをやっていると、会社が成長し、従業員が増えていくにつれて、従業員に社長のマネをされ、大きな問題に繋がったりしているケースは、少なくないのです。筆者もそういう視点で税務調査をやってきたから発見できたのだとは思いますが、多くの税務調査でこのような事例に遭遇していました。経営者も従業員もそれほど罪の意識のないままに、不正の道へ迷い込んでしまわないよう、創業当初から意識していただくことをお勧めします。大企業でニュースになっている問題の原因は、会計に限らず、こういった風土から出てくることが多いと思います。この点をご理解いただければ、このブログの使命の大半は達成されたといっても過言でないくらい重要です。

「税務調査で指摘を受けない3大ポイント」第3位「『儲け』と『期間』が合っているか?」では通期で見れば、影響の少ない問題でした。第2位「『理想』と『現実』が合っているか?」では通期で見れず、影響が大きい問題でした。第1位「『儲け』と『主体』が合っているか?」では通期どころが、経営を揺るがす問題を抱えている可能性があります。

最後に、税務調査とは?

税務調査をされる側にとって、税務調査に来られると「何らかもっていかれる」とか「面倒臭い」と思っている人が大半だと思います。税務調査をする国税職員だって「何らかもってこないと」とか「行きたくないなぁ」と思っている人も多いと思います。確かに短期的には心情的に互いに「とった」「とられた」ということになります。でも、そんな気持ちで良いのでしょうか?もっとポジティブに税務調査をされる側には、税務調査の指摘事項を見直し、経営改善に役立ててほしいのです。顧問税理士だって全てをチェックはできないのです。100点はありえないので、分かっていてもあえて目をつぶっているケースもあります。見落としもあるかもしれないので、違った視点で見てもらうチャンスです。きっちり出来ていれば、大した税金を払わなくてすむでしょうし、問題が大きければそれなりの税金を払う必要が出てきます。その税金は国が会社のチェックをしてくれるチェック料だと考え、経営の見直しの材料として役立てていただければ、経営の安定や成長に繋がると思います。その結果、納めてもらえる税金が増え、国も適正公平な課税の実現を達成します。そんな長期的な視点で「WINWIN]の関係になれれば、いいなぁ~って、そんな「理想」を描いている筆者です。ちなみに、「現実」を目視せず、「とらんかな精神」で税務調査をやってくる後輩がいれば、税理士として公正な立場で毅然とした対応させていただきます(笑)

長くなってしまいましたので、今回はここまで、とさせていただきます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。スピンオフバージョンもご期待ください。


なお、この投稿は、投稿日現在の情報です。投稿者の私見が含まれており、情報の誤りがある可能性もあります。また、個々の状況により、適切妥当な判断が異なる場合もあります。したがって、本投稿に基づき、発生した損害等は一切応じられません。顧問税理士がおられる場合には、相談していただくことをお勧めいたします。


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