さいたま市の税理士事務所の国税OBが考える税務調査対策ベスト2

query_builder 2023/08/15
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令和五年八月八日 こだま税理士事務所開業。

開業1週目記念\(^o^)/特別ブログの第2弾として、税務調査で指摘を受けないための「税務調査対策3大ポイント~ベスト2」について、解説します。

特別ブログ第1弾「税務調査対策3大ポイント~ベスト3」はお読みいただけたでしょうか?まだ読まれていない方は、ぜひお読みください。

では、早速、「税務調査対策3大ポイント」のベスト2の発表です。

第2位は、『「理想」と「現実」が合っているか?』です。

「理想」って何?、「現実」って何?と思われた方がほとんどだと思います。

まずは、「理想」から解説していきます。

「儲け」を計算する2つの方法

第1弾で、「会社は半永久的に継続するため、儲ける必要がある」と説明しました。では、儲けはどのように計算するかわかりますか?

「儲ける」には、①「投資」をして、②「付加価値」を付けて、③「リターン」を得る経営活動が必要でした。前回の例だと、①80万円の投資をして、②20万円の付加価値を付けて、③100万円のリターンを得るパターンで解説しました。この場合だと、「儲け」は20万円です。会社の従業員や経営者の給料などを捻出するには、もっと儲けないといけないですよね。個々の②「付加価値」=「儲け」を積み上げて計算する方法もあります。ただ、どんな投資をして、どれくらいのリターンを得たのかがわかりません。裏付けがない「儲け」なんて、適当にごまかせてしまうことだって可能です。そうすれば、税金だってごまかせてしまいます。裏付けのある儲けを計算するには、①の「投資」と③の「リターン」を記録として残しつつ、「決算書」という報告書につくりあげて、やっと今期の「儲け」がわかるのです。

①の「投資」と③の「リターン」をまとめて「取引」といいます。この「取引」内容を分類・整理(仕訳)し、分類された明細表(元帳)をまとめて、「決算書」を作成します。

この決算書には「貸借対照表(B/S:Balance Sheet、よく『ビーエス』っていわれます)」と「損益計算書(P/L:Profit & Loss statement、よく『ピーエル』っていわれます)」という2つの報告書があります。

「貸借対照表」には、左側に「総資産」、右側に「総負債」と「純資産」が記載され、左右の金額は一致することとなっています。前期末の「純資産」と今期末の「純資産」の増減額が今期の「儲け」になります。

「損益計算書」は、①売上総利益、②営業利益、③経常利益、④税引前当期純利益そして⑤当期純利益の5つの利益に区分して記載します。それぞれの利益(儲け)は投資やリターンの内容ごとに区分され集計されます。最後の⑥の当期純利益は今期の「儲け」となり、貸借対照表の今期の「儲け」と一致するはずです。

会計処理上の「理想」

これらの「取引」から「決算書」までのプロセスを「会計処理」といいます。「会計処理」がきちんと処理されていれば、その点において、税務署から文句を言われる筋合いはありません。

これが会計処理上の「理想」です。

「理想」と「現実」の5つの不一致原因

次に「現実」について解説します。「理想」と「現実」が一致することこそ理想ですが、残念ながらら、様々な理由により、「現実」と一致しないことがあります。大きな原因として、5つに絞ってみました。

第1に、会計処理上の「ミス」です。

取引の認識誤りから始まり、記帳・転記・入力や分類・整理、集計それぞれの段階で、ミスは発生します。コンピュータでもプログラムミスだってあります。手書きよりは圧倒的にミスは軽減できますが、自動仕訳機能のあるプログラムであると、設定誤りがあると関係するすべてが誤ってしまうということも起こり得ます。また、コンピュータプログラムの中はブラックボックスなのでたまたま何らかの意図しない入力を行ってしまい、誤った処理をする可能性もあります。このミスは、下記の対処方法でチェックする他、顧問税理士にチェックをしてもらいミスを軽減するしかありません。

第2に、会計処理上の「モレ」です。

通常取引の認識は、納品書・請求書・領収書等の証拠や現金や預貯金の推移を基に経理担当が会計処理をします。どんなに優れた経理担当でも証拠がなければ、取引の認識は正確にはできません。しかも、現金や預貯金の推移が分からなければ、闇に葬られることもあります。「投資」などの証拠のモレは、経費計上のモレとなり、利益(理想)がモレた分だけ増えます(現実)。「リターン」などの証拠のモレは、売上計上のモレとなり、利益(理想)よりモレた分だけ減ります(現実)。税務調査では、税金が増える「リターン」のモレがないかは優先的に確認されます。なお、「投資」のモレは、限られた調査期間で効率的に処理するためには、税務調査では積極的には見ていないのが普通です。「投資」のモレもしっかり見てというと、税務調査の時間が伸びてしまいますので、心で思っていても、口には出さないようにしましょう(笑)。当然、はっきり誤りがあるものがあれば、税務調査で考慮してもらうこともありえますが、まずはその前に、いずれのモレもないようにすることが重要です。売上計上モレは請求モレにつながる可能性もあり、何らかの売上管理を行っておく必要があります。また特に現金は極力取引量を減らすとともに現金出納帳での管理することをお勧めします。現金取引を減らすには、PayPayなどの電子決済やカード決済を増やす方法があります。なお、「リターン」のモレの中にはワザとやったばあい、隠ぺいしたことに繋がりますので、通常よりも負担の大きい重加算税の対象となります。この加算税の対象となった場合には、その後の税務調査が早く来るなどの影響もあります。

第3に、会計処理上の「ウソ」です。

「投資」などの証拠のウソは、経費計上のウソとなり、利益(理想)がウソの分だけ減ります(現実)。「リターン」などの証拠のウソは、売上計上のウソとなり、利益(理想)よりウソの分だけ増えます。税務調査では、税金が増える「投資」のウソがないかは優先的に確認されます。なお、「リターン」のウソは、限られた調査期間で効率的に処理するためには、税務調査では積極的には見ていないのが普通です。先程のモレとは違い、ウソは事実を仮装することに繋がりますので、通常よりも負担の大きい重加算税の対象となります。この加算税の対象となった場合には、その後の税務調査が早く来るなどの影響もあります。

第4に、会計処理上の「ダブり」です。

これは、入出金ベースと請求書等ベースでそれぞれ記帳していたり、カード決済明細と請求書等の両方で記帳していたり、銀行口座間での資金移動等で発生します。特に、消費税のインボイス制度が始まると、第1弾で触れたように、請求書等ベースの記帳が増えるため、ダブりが増えることが予想されます。ただ、クラウド会計等では、重複チェック機能を装備しているところもあり、その機能をどのように使っているかで、ダブりのチェックは確認できます。

第5に、会計処理外との「ズレ」です。

これは、会計処理上の理想と会計処理外(想定外)の現実が見られることが原因です。会計処理は当然実務的なものなので、そういったズレも取り込んでいけるようにしています。例えば、現金、固定資産や副産物など、帳簿上残高(理想)と実際の残高(現実)に差が出ることが多いです。これらの資産等の差が出た原因は、釣り銭誤り、数え間違え、確認モレ、紛失・盗難などに該当するのかを確認してください。確認作業で請求書等の提出モレ等を発見する場合もあります。資産によって、実際の残高を定期的に確認することをお勧めします。

「ズレ」には、数量だけでなく単価も原因になります。通常、原価は取得したとこの単価を継続するのですが、資産の種類等によっては減価償却などによって時価相当額を算出する必要があります。減価償却やその他の時価評価をすべき財産がある場合には、考慮すべき点が多いことがあるので、顧問税理士に相談することをお勧めします。

いずれにしても、完璧はありえないので、決算を行う前に「決算整理」と言って、「現実」に近づけるために、「理想」の補正をします。この補正をいい加減にしていると、税務調査官がおいしいと思って近づいてくるかもしれませんので、テキトー(適切妥当)に処理をしておくことをお勧めします。

なお、原価にかかる在庫は、POSレジ等をしていない場合、個々の払い出しの取引を記帳していないことがほとんどです。そのため、「棚卸し」をしないと、正確な儲けがわからないことになりますので、他より重要です。だったら個々の払い出しの取引を記帳すればいいんじゃない?と思われる方もいると思います。原価は売上を得るために直接かかった商品などのため、数も多く、種類も多いのが普通です。一つ一つ計算していたら、手間がかかり、本業もママなりません。そんな負担軽減を考えた実務上の会計処理上の方法なので、理想と現実を融合させた当時としては画期的な方法であったと思います。

以上、「理想」と「現実」の違いの原因5つ(①ミス、②モレ、③ウソ、④ダブり、⑤ズレ)とその対応策を説明しました。

税務調査で見るポイント

その中でも、税務調査では、重加算税がかかる可能性が高い②の売上計上モレと③の経費のウソ計上の発見に集中してくる可能性が高いです。上記の対策の他、従業員がいる会社ではそれぞれの不正が起きないようなチェック体制を検討することをお勧めします。そういった意味でも、第2位は、『「理想」と「現実」が合っているか?』は、税務調査対策だけでなく、経営特に内部牽制にも必要な対策です。

③売上計上モレや④経費のウソ計上が合った場合には「儲け」が圧縮されます。仮装や隠ぺいの事実があれば、重加算税の対象となります。これを「逆粉飾」といいます。では、その逆の「粉飾」の場合であったら、税務署の指摘を受けず、重加算税の対象にはならないのでしょうか?

この点については、「ならない場合」と「なる場合」があるというのが、正解です。この考えは、税理士や税務職員でも間違った認識を持っておられる方が多いので注意が必要です。機会があれば、この点について解説したブログを予定しています。

ちなみに、「逆粉飾」の主な目的は「脱税」ですが、「粉飾」の主な目的は「金融機関の融資などの資金調達」や「通常大手取引先の取引条件達成」のためです。「逆粉飾」は国に対する、「粉飾」は金融機関などに対する「詐欺」になる可能性があります。経営上とるべきリスクは時として必要ですが、これらはとらなくてもすむリスクです。そんなリスクを取って、会社を危険に晒すより、経営に集中したほうが良い結果につながると考えているのは筆者の「理想」でしょうか?

税務処理上の「理想」

「理想」には「会計処理上の理想」の他にも、他の理想があります。おわかりの方はおられますか?感の良い方だとお気づきかもしれません。それは、「税務処理上の理想」です。税務処理上の理想は、今までの内容と異なり、個別具体的なものが多く、今までのような解説が難しいところです。読者のほとんどの方が会社の経営者等と想定しているため、ここでは突っ込んで説明いたしません。税務処理上の「理想」は顧問税理士さんに相談されるのが良いと思います。今後、ブログ等で随時配信していく予定です。

3つ時点の「現実」

なお、「現実」には、「取引時点の現実」と「決算時点の現実」の2つの「現実」があります。「現実」が「取引時点」から「決算時点」へと時間が経過するとともに、様々な要因によって、そのときに取引を認識できない事象が発生します。これが3つ目の「期間経過の現実」です。それが、「会計処理上の理想」と「現実」が合わなくなる理由です。「理想」と「現実」の差を確認する際には、どの「現実」なのか意識していただくと、理解しやすくなることがあります。

長くなってしまいましたので、今回はここまで、とさせていただきます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

「税務調査で指摘を受けない3大ポイント」第3位「『儲け』と『期間』が合っているか?」では通期で見れば、影響の少ない問題でした。今回の第2位「『理想』と『現実』が合っているか?」では通期で見れず、影響が大きい問題でした。次回の第1位… 次回(来週)もお楽しみに‼


なお、この投稿は、投稿日現在の情報です。投稿者の私見が含まれており、情報の誤りがある可能性もあります。また、個々の状況により、適切妥当な判断が異なる場合もあります。したがって、本投稿に基づき、発生した損害等は一切応じられません。顧問税理士がおられる場合には、相談していただくことをお勧めいたします。

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