はじめに
令和5年12月27日に浦和税務署で「消費税等説明会」の講師をすることになりました。
10月から始まった「インボイス制度」もあり、その説明もしなければならないタイトなスケジュールです。
皆さんが勘違いやすい切手の経理処理について、本当はその場で説明したかったのですが、たぶんそこまで説明してしまうと、時間切れになってしまいそうでしたので、別途解説をさせていただくこととしました。
本稿は、切手を購入・使用・余った時の経理処理を解説したものです。消費税の免税事業者や課税事業者で簡易課税や2割特例の適用を受けることが確実な方は、あまり関係がありませんので、飛ばしてもらっても、構いません。
ただ、最後の余談は、この内容に関連することですが、多くの事業者にとって影響のある勘違いし易い事例ですので、そこだけは是非お読みいただきたいと思っています。
では、早速解説を始めていきます。
切手は、税務署で配っている「消費税のあらまし(令和5年6月)」の12~13ページを見ると、
って掲載されてます。
けど、「確か、切手って消費税がかかっていると聞いたことがあるんだけど…」
と思っている方は少なからずおられるのではないでしょうか?
また、この掲載だけで見ると、一見消費税がかからないように勘違いされる方も少なくありません。
この点について、結論を一言でいうと、
「買ったときは非課税、使ったときは課税」が原則です。
「どういうこっちゃ?」と思われる方が多いと思いますので、簡単に説明します。
消費税は、切手を使ったという役務(サービス)の提供を受けたときに、消費税が課税されるため、それまでは、切手という物を買ったときまで、消費税が課税されると、消費税を二重に課税されることになってしまいます。
そのため、最終目的の切手を使ったという役務(サービス)の提供を受けたときに、消費税が課税されることとし、切手という物を買ったときは、二重課税されないように、消費税が非課税という形をとっているのです。
例えば、
【原則の処理】
(買った時)
12月27日に84円切手10枚を現金で買ったとします。その時の仕訳は、
12/27 (借方)貯蔵品 840円 (貸方)現 金 840円
(使った時)
12月28日に84円切手を2枚使いました。その時の仕訳は、
12/28 (借方)通信費 154円 (貸方)貯蔵品 168円
仮払消費税 14円
(期 末)余った時…管理している残数と一致している場合
12月31日に84円切手8枚が残っているのを確認した。その時の仕訳は、
仕訳なし
となります。
しかし、この方法は、理論上の仕訳であり、原則の方法ですが、あまり使われてないと思います。
というのも、使った時の管理が、大抵の場合できていないのではないでしょうか?
その場合は、次のような例外的取り扱いも認められています。
【例外の処理】
(買った時)
12月27日に84円切手10枚を現金で買ったとします。その時の仕訳は、
12/27 (借方)通信費 770円 (貸方)現 金 840円
仮払消費税 70円
(使った時)
12月28日に84円切手を2枚使いました。その時の仕訳は、
仕訳なし
(期 末)余った時
12月31日に84円切手8枚が残っているのを確認した。その時の仕訳は、
12/31 (借方)貯蔵品 672円 (貸方)通信費 616円
仮払消費税 56円
となります。
この例外の処理では、以下の点で注意が必要です。
① 買った時は、原則は非課税ですが、例外の処理では課税とします。
ご使用の会計ソフトによっては、消費税の課税、非課税等の区分を自動的に判定してくれるシステムもあります。
その場合非課税になっている場合には、課税に変えておく必要があります。
② 使った時ごとの仕訳を省略でき、さらに、使用時の管理も省略できます。
ですが、できれば事業用と家事用とを区別するためにも、購入時や使用時の管理をしておくことをお勧めします。
また、原則の方法に比べ、期末の処理が増えますので注意してください。
③ 期末の処理として、必ず期末に切手の在庫を確認して、上記の仕訳をしてください。
そうしないと、消費税だけでなく、所得税や法人税の経費まで余分に計上してしまうことになってしまい、正しい所得の計算ができません。
場合によっては、税務調査で指摘を受ける可能性もありますので、忘れないようにしてください。通常は、多額の切手が残っているということはないので、あまり問題になるケースは多くないと思います。
余談ですが、決算月などに多額の切手や消耗品などを購入し、税金を圧縮するケースがあります。これを、「節税」という謳い文句で営業されているケースがよくあります。
ただ、使っていなければ、貯蔵品などとしてそれぞれのその期の経費から減らす必要があります。いくら買おうとも結果的に使っていなければ、使った期の経費になっても、買ったその期の経費にはならないのです。
したがって、本来経費とならないものを経費にすると、税務調査で指摘を受ける可能性は格段と上がりますので、気をつけてください。さらに、「あえて在庫確認をしていない」などと税務署に認定されてしまうと、重加算税の課税の対象となってしまいます。そうなると、重加算税や延滞税の負担が増えるばかりではなく、次の税務調査も近いうちに来る可能性が高くなります。このように「節税」にもならず、「脱税」したとして要注意納税者のレッテルを貼られる可能性のあるような対応はなんの徳にもなりません。
さらに、経費にできないばかりか、金額によっては資金繰り的にも影響が出ることもあります。
先程のような営業マンがきた場合には安易に話に乗ってしまわないようにしてください。
こだま税理士事務所
住所:埼玉県さいたま市桜区山久保2-16-1
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