さいたま市の税理士が解説する「税制改正:無申告加算税の概要と無申告者の節税等」

query_builder 2023/10/17
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0 はじめに            

 令和5年度税制改正で、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について、無申告者に対するペナルティー(加算税)の強化が図られています。

 その改正内容の説明と、その背景にあるもの、そして無申告者が採るべき善後策などを開設します。

1 税務調査の対応         

 国税庁では、課税の公平の観点から、重点的に取り組む課題として無申告者の対応を掲げています。そのため、税務調査でも重点的に選定されます。

 コロナ禍がある程度収束し、今後従前どおり、税務調査の増加が見込まれます。

 今まで連絡が取れなかった無申告者に対して、令和5年10月1日からスタートしたインボイス制度の新規登録事業者になり、連絡できるようになった無申告者をターゲットとして、調査対象者に上がることが見込まれます。


2 ペナルティー(加算税)の強化  

 期限後申告に追加される無申告加算税等について、2つの教科がなされます。(令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。)

 ※下記の下線部が改正点です。



50万円以下

50万円~300万円

300万円超

調査通知前

5%

調査による更正等予知前まで

10%

15%

調査による更正等予知以降

15%

20%

20%

→30%※1

※1 高額無申告を発生させたことについて納税者の責めに帰すべき事由がない場合については、除外されます。



調査による更正等予知以降の場合のみ)

・期限後申告等があった日前5年以内に同じ税目に対して無申告加算税又は重加算税を課された場合

前年度及び前々年度の国税ついて、無申告加算税又は重加算税を課された場合(令和5年税制改正追加)



50万円以下

50万円~300万円

300万円超

無申告の場合

15%

→25%

20%

→30%

20%

→40%

仮装・隠蔽の場合

40%

→50%


3 無申告の場合の節税対策等        

 無申告の場合の節税等として考えられる方法は、3つです。


 1つ目は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する   

      国税について適用の課税強化前に自主申告す

      ること。

 【効果】課税強化後に税務調査をされると、

     加算税の負担は大きくなります。

     それを未然に防ぐことができます。


 2つ目は、税務署から税務調査の連絡が来る前に自主的

      に申告すること

 【効果1】無申告加算税の金額を抑えることができる

 例)法人税・消費税が毎期100万円前後の税金が発生    

   してる場合、

  調査で申告する場合

   50万円✕15%+50万円✕20%=17.5万円

  自主で申告する場合

   100万円✕5%       = 5 万円

  差引              12.5万円

   となり、調査で申告する前と自主で申告する場合と 

  では12.5千円もの加算税が変わってきます。

 【効果2】調査を受ける手間が省ける

 【効果3】不利な重加算税決定や推計課税をされる

      可能性が減る


 3つ目は、2期以上の連年無申告を発生させないことです。青色申告で無申告期間2期になると、2期目は強制的に青色申告の取消が行われます。そうすると、2期目はその期の欠損金の繰越ができなくなるなど青色申告の特典を受けれなくなります。また、青色申告の取消を受けた後1年間は青色申告の申請ができなくなります。1期の場合、青色申告の取消を受けないようにすることで、不利益処分を防止てきます。

 【効果】青色申告を受けている場合の特例

     (欠損金の繰越など)を受けられなくなる

     青色申告の承認の取消し処分を防止できます。



 結論 節税等の方法は、結果的には①税務署からの調査すると言われる前に、期限後申告を行うことです。そして、②無申告期間を減らすことです。


4 今後の善後策          

 自主申告を早急に行い、無申告加算税等を膨らませないようにすることです。

 無申告の場合、無申告の場合のやるべき手順おさえておきましょう。なお、やるべき手順については、こちらを参照してください。

 税理士がいない場合より、税理士に依頼するほうが、早く申告ができます。税理士が申告することにより、その後実地調査になる可能性は軽減されます。


5 最後に             

 筆者は、統括国税調査官時代、無申告法人の調査を積極的に指令してきました。その実績を聞きつけた上層部が、その調査手法を題材にした東京国税局の部内広報紙『法人課税課速報』に掲載したいと話があり、情報提供を行ったこともあります。

 筆者が、当時無申告法人の調査を積極的に指令した理由は、コロナ禍で調査困難な時期で通常の調査が制限されていたこともありますが、いちばん大きな目的は、無申告法人の経営の健全化でした。

 無申告状態を脱出すること。無申告により、資金繰りが悪化し、銀行融資も受けられなくなるという悪循環を断ち切り、少しずつでも改善していくという方向にステップしていただきたいとの思いでした。

 無申告法人の決算・申告は場合によって、通常の数倍の事務量がかかることもあり、敬遠される税理士の方も少なからずおられます。今の無申告状態を脱出し、経営の健全化を図りたいという方は、お気軽にご相談ください。


 なお、この投稿は、投稿日現在の情報です。投稿者の私見が含まれており、情報の誤りがある可能性もあります。また、個々の状況により、適切妥当な判断が異なる場合もあります。したがって、本投稿に基づき、発生した損害等は一切応じられません。顧問税理士がおられる場合には、相談していただくことをお勧めいたします。





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